マイクロ法人とは?メリット・デメリットを詳しく解説

07/22/2025

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質問者

事業が軌道に乗ってきたんだけど、税金や社会保険料が高くてつらい……

費用負担を抑える良い方法はないのかな?

このような悩みを解決する方法として、マイクロ法人の設立が挙げられます。
マイクロ法人は個人事業主やフリーランスから注目されている、合法的かつインパクトのある節税方法です。

本記事では、マイクロ法人の概要にくわえてメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

本記事の内容

  • マイクロ法人の概要
  • マイクロ法人のメリット・デメリット
  • マイクロ法人の作り方

今よりも手取りを増やしたい、税金や社会保険料の負担を軽くしたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

マイクロ法人とは

マイクロ法人とは、従業員を雇用せず代表者(経営者)1人で運営する会社の俗称です。
個人事業主やフリーランスが、所得税や住民税、社会保険料の負担を抑えることを目的として設立します。

なお、マイクロ法人は会社法で定められた正式な概念ではありませんが、設立する際は法人と同様に法務局への登記が必要です。

マイクロ法人のメリット

マイクロ法人を設立すると、以下のようなメリットが得られます。

マイクロ法人のメリット

  1. 税負担を軽減できる
  2. 社会保険料を抑えられる
  3. 経費として認められる範囲が広くなる

それぞれ、詳しく見てみましょう。

メリット①税負担を軽減できる

マイクロ法人のメリットとして、税負担の軽減が挙げられます。

個人事業主の場合、事業所得に課される所得税率には超過累進課税が採用されており、所得金額が多くなるにつれて段階的に税率が高くなります。
所得税率は5~45%までの7段階に区分されており、仮に所得金額が年間4,000万円を超えると、そのうち45%近い金額が税金として徴収されてしまうのです。
※税率ごとに控除が設けられています。

課税される所得金額税率控除額
1,000~1,949,000円5%0円
1,950,000~3,299,000円10%97,500円
3,300,000~6,949,000円20%427,500円
6,950,000~8,999,000円23%636,000円
9,000,000~17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000~39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

参照元:国税庁 所得税の税率

一方、マイクロ法人を設立すると、所得税ではなく法人税が課されます。
法人税率は企業規模や所得金額によって変動するものの、基本的には15%または23.2%と定められています。

区分所得金額税率
普通法人中小法人年800万円以下の部分15%
年800万円超の部分23.2%
中小法人以外の法人全額23.2%

参照元:中小企業庁 法人税率の軽減

上の表では中小法人とそれ以外の法人を区分しておりますが、資本金1億円以下の一般的な事業者であれば中小法人と判定して問題ないでしょう

参照元:国税庁 中小企業者の判定等フロー

いぐち

所得税と法人税の税率を見比べると、所得額に応じてどちらが有利なのかがお分かりいただけるのではないでしょうか。

メリット②社会保険料を抑えられる

税負担にくわえ、社会保険料を抑えられるのもマイクロ法人の魅力です。

まずは、個人事業主とマイクロ法人の代表者が加入する社会保険の違いを確認しておきましょう。

区分社会保険の種類
個人事業主国民健康保険・国民年金
マイクロ法人の代表者健康保険(協会けんぽ)・厚生年金

個人事業主が加入する国民健康保険は、前年の所得金額に応じて保険料が決定されます。
それに対し法人の代表者が加入する健康保険(協会けんぽ)は、役員報酬の額によって保険料が決められます。

ここで法人が有利になるポイントは、役員報酬の額は代表者自身で自由に設定できる点です。
たとえ会社で大きな利益が発生したとしても、役員報酬さえ上げなければ保険料が上がることはありません。

また一定の条件を満たせば、扶養家族の保険料の支払いが免除され、年金受給額が増額されるといった恩恵も受けられます。

メリット③経費として認められる範囲が広くなる

マイクロ法人を設立すると、個人事業主よりも経費計上できる範囲が広がり節税効果が得られます。

そもそも経費とは、事業を運営するために使用した費用のことです。
基本的に個人事業主も法人も、事業にかかった費用はすべて経費として計上できます。

ところが、代表者自身の給料に関しては個人事業主と法人とで扱いが異なります。

個人事業主の場合、代表者(経営者)に対する給与という概念がないため、自身の給料を経費に計上できません。
一方法人は、自身の給料は役員報酬として取り扱われるため、経費計上が可能になります。
さらに賞与・退職金・生命保険料も経費にできるので、そのぶん課税所得の減額されるわけです。

経費に計上する額が増えれば課税所得が減り、結果的に税負担が軽くなります。

マイクロ法人のデメリット

さまざまなメリットを得られるマイクロ法人ですが、設立するにあたって以下に注意が必要です。

マイクロ法人のデメリット

  1. 法人の設立費用がかかる
  2. 法人住民税が発生する
  3. 事務作業が煩雑化する

順番に解説します。

デメリット①法人の設立費用がかかる

マイクロ法人を立ち上げるにあたって株式会社なら20万~25万円、合同会社なら10万円程度の設立費用がかかります。

設立費用の内訳を表にまとめましたので、ご参照ください。

費用項目金額
登録免許税株式会社/15万円~
合同会社/6万円~
合名会社/6万円
合資会社/6万円
資本金1円~
定款の認証手数料3万~5万円
収入印紙 ※紙面での定款のみ4万円
会社印鑑100円~
印鑑登録料1,000円

資本金は、1円以上であれば自由に設定できます。
また、法人設立の手続きを税理士に依頼するとなると、追加で5万円程度かかる見込みです。

マイクロ法人を立ち上げる際は、こういった費用を無理なく支払える程度の自己資金を用意しておく必要があります。

デメリット②法人住民税が発生する

マイクロ法人の代表者には、法人住民税(均等割)を納付する義務が生じます。

法人住民税(均等割)は、法人の事務所を構える地方自治体に納める税金です。
マイクロ法人の場合、都道府県民税均等割2万円と市町村民税均等割5万円の計7万円を支払うことになります。

なお、法人住民税(均等割)は、たとえ赤字だったとしても毎年必ず支払わなければなりません。
個人事業主であれば赤字の年に限り所得税・住民税は徴収されませんので、この点は明確なデメリットといえるでしょう。

デメリット③事務作業が煩雑化する

マイクロ法人を設立すると、個人事業主のときよりも事務作業が煩雑になることは避けられません。
というのも個人事業主であれば年一回の確定申告だけでよかったところを、法人になると決算申告も行わなければならないからです。

決算申告とは、会計期間中のすべての財務活動をまとめ、決算書を作成し、その内容に基づいて税金を計算して申告する一連の手続きのことです。
この手続きに際して、事業者には貸借対照表や損益計算書といった書類の作成が求められます。

貸借対照表(B/S)とは、決算日の企業の資産・負債・純資産の内訳を示す表のことです

損益計算表(P/L)は、決算期の企業の利益と支出を示す表です

いぐち

1人で会社を運営しなければならないマイクロ法人の代表者からすれば、決算申告に伴う業務負担はつらいものに感じられるかもしれません。

なお、決算申告を税理士に委託し、業務の簡略化を図るのも一案です。
ただし委託費が高額になると、節税メリットを帳消しにしかねないので注意しましょう。

マイクロ法人の作り方

マイクロ法人を設立する際は、以下の手順に沿って手続きを進めます。

マイクロ法人設立の手順

  1. 定款(ていかん)に記載する基礎情報を決める
  2. 法人用の印鑑を作成する
  3. 定款を作成する
  4. 定款の認証を受ける
  5. 資本金を払い込む
  6. 登記申請書類を作成し申請する
  7. 登記簿謄本と印鑑証明書を受け取る
  8. 役所に届け出る

法人設立する際、個人事業主は個人事業の開業・廃業等届出書を税務署に提出し、廃業手続きを行わなければなりません。

また給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書の提出や、社会保険への切り替え手続きも必要になります。

まとめ

本記事では、マイクロ法人の概要とメリット・デメリットを解説しました。

本記事の内容

  • マイクロ法人の概要
  • マイクロ法人のメリット・デメリット
  • マイクロ法人の作り方

マイクロ法人は、従業員を雇わず代表者1人だけで運営する法人(会社)の俗称です。

個人事業主やフリーランスが、税金や社会保険料の負担を抑える目的で設立します。
法人設立に際して登録免許税や法人住民税などの出費は発生しますが、その費用負担を上回る節税効果が得られます。

ご自身が手掛けている事業が軌道に乗り始めた際には、マイクロ法人の設立を検討してみてはいかがでしょうか。

  • この記事を書いた人

いぐち こうき

二級ファイナンシャル・プランニング技能士のWebライター。前職は飲食店経営者です。 お金に関する知識を“中学生にもわかる言葉”でわかりやすく発信しています。

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