
事業が軌道に乗ったのはいいけど、税金や社会保険の負担がキツイなぁ
このような悩みを解決できる手立てとして、“マイクロ法人”の設立が挙げられます。
マイクロ法人は、個人事業主やフリーランスから注目を集めている合法的かつインパクトのある節税方法です。
本記事では、マイクロ法人の概要とともに、そのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
「手取りを少しでも増やしたい」とお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
マイクロ法人とは

マイクロ法人とは、従業員を雇わず代表者(経営者)1人で運営する会社のことです。
個人事業主やフリーランス、副業ワーカーなどが、所得税や住民税、社会保険料の負担を抑えることを主な目的として設立します。
なお、“マイクロ法人”は会社法で定められた正式な概念というわけではありませんが、設立する際は一般的な法人と同様、法務局への登記が必要です。
マイクロ法人のメリット

マイクロ法人を設立した際、どのようなメリットが享受できるのかは気になるところですよね。
主に、以下の3点が挙げられます。
マイクロ法人のメリット
- 税負担を軽減できる
- 社会保険料を抑えられる
- 経費として認められる範囲が広くなる
それぞれ、詳しく見てみましょう。
メリット①税負担を軽減できる
マイクロ法人を設立するメリットの一つとして、税負担の軽減が挙げられます。
個人事業主の場合、事業所得に課される所得税率には“超過累進課税”が採用されており、所得金額が多くなるにつれて段階的に税率が高くなります。
所得税率は5~45%までの7段階に区分されており、仮に所得金額が年間4,000万円を超えると、そのうち45%近い金額が税金として徴収されてしまうのです。※税率ごとに控除が設けられています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
参照元:国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
一方、マイクロ法人を設立すると所得税ではなく法人税が課されることになります。
法人税率は企業規模や所得金額によって変動するものの、基本的には15%または23.2%と定められています。
区分 | 所得金額 | 税率 | |
普通法人 | 中小法人 | 年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.2% | ||
中小法人以外の法人 | 全額 | 23.2% |
参照元:中小企業庁https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tokurei/houjin_keigen.html
なお、上記の表では中小法人とそれ以外の法人を区分しておりますが、資本金1億円以下の一般的な事業者であれば、中小法人と判定して問題ありません。
参照元:国税庁「中小企業者の判定等フロー」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2023/pdf/03.pdf
メリット②社会保険料を抑えられる
税負担にくわえ、社会保険料を抑えられる点もマイクロ法人の魅力です。
前提として、個人事業主とマイクロ法人の代表者が加入する社会保険の違いを押さえておきましょう。
区分 | 社会保険の種類 |
---|---|
個人事業主 | 国民健康保険・国民年金 |
マイクロ法人の代表者 | 健康保険(協会けんぽ)・厚生年金 |
個人事業主が加入する国民健康保険は、前年の所得金額に応じて保険料が決定されます。
それに対しマイクロ法人の代表者が加入する健康保険(協会けんぽ)は、役員報酬の額によって保険料が決められます。
ここでポイントとなるのは、役員報酬の額は代表者自身で自由に設定できることです。
つまり、会社で大きな利益を出したとしても、役員報酬さえ上げなければ保険料は一切上がらないというわけです。
また一定の条件を満たしていれば、扶養家族の保険料を支払う必要がなくなるうえに、年金受給額が増えるといった恩恵も受けられます。
メリット③経費として認められる範囲が広くなる
マイクロ法人を設立すると、個人事業主よりも経費計上できる範囲が広がり、節税につながります。
そもそも経費とは、事業を運営するために使用した費用のことです。
基本的に個人事業主も法人も、事業にかかった費用はすべて経費として計上できます。
ところが、代表者自身の給料に関しては扱いが異なります。
個人事業主の場合、代表者(経営者)に対する給与という概念がないため、自身への給料を経費として計上することはできません。
一方法人化すると、自身への給料は役員報酬として取り扱えるため、経費計上が可能になります。
くわえて賞与や退職金、生命保険料も経費にできるので、そのぶん課税所得を減らせるのです。
経費として計上する額が増えれば、それだけ税負担の軽減が望めます。
マイクロ法人のデメリット

さまざまなメリットを得られるマイクロ法人ですが、設立するにあたって以下の点に注意が必要です。
マイクロ法人のデメリット
- 法人の設立費用がかかる
- 法人住民税が発生する
- 事務作業が煩雑化する
順番に解説します。
デメリット①法人の設立費用がかかる
マイクロ法人を立ち上げるにあたって株式会社なら20万~25万円、合同会社なら10万円程度の設立費用がかかります。
設立費用の内訳を表にまとめましたので、ご覧ください。
費用項目 | 金額 |
---|---|
登録免許税 | 株式会社/15万円~ 合同会社/6万円~ 合名会社/6万円 合資会社/6万円 |
資本金 | 1円から |
定款の認証手数料 | 3万~5万円 |
収入印紙 ※紙面での定款のみ | 4万円 |
会社印鑑 | 100円~ |
印鑑登録料 | 1,000円 |
資本金に関しては、1円以上であれば自由に設定が可能です。
また法人設立の手続きを税理士に依頼するとなると、上記にくわえて+5万円程度かかると見込んでおきましょう。
マイクロ法人を立ち上げる際は、これらの費用を無理なく支払える程度の自己資金を用意しておく必要があります。
デメリット②法人住民税が発生する
マイクロ法人を設立すると、代表者に対して“法人住民税(均等割)”を納付する義務が生じます。
法人住民税(均等割)は、法人の事務所を構える地方自治体に納める税金です。
代表者一人で運営するマイクロ法人の場合、都道府県民税均等割2万円と市町村民税均等割5万円の計7万円を支払うことになります。
なお、法人住民税(均等割)は、たとえ赤字だったとしても毎年必ず支払わなければなりません。
個人事業主であれば赤字の年に限り所得税・住民税は徴収されませんので、この点は明確なデメリットといえるでしょう。
デメリット③事務作業が煩雑化する
マイクロ法人を設立すると、個人事業主のときよりも事務作業が煩雑になることは避けられません。
というのも個人事業主であれば年一回の確定申告だけでよかったところを、法人になると確定申告にくわえて決算申告も行わなければならないからです。
決算申告とは、会計期間中のすべての財務活動をまとめ、決算書を作成し、その内容に基づいて税金を計算して申告する一連の手続きのことです。
この手続きに際して、事業者には貸借対照表や損益計算書といった書類の作成が求められます。
一人で会社を運営しなければならないマイクロ法人の代表者からすると、決算申告に伴う業務負担の増加は、厳しいものに感じられるかもしれません。
なお、決算申告の業務負担を軽くする手立てとして、税理士に委託するのも一案です。
ただし、委託費が高額になったために節税メリットを帳消しにしてしまった、といった事態に陥らないよう注意しましょう。
マイクロ法人の作り方

マイクロ法人を設立する際は、以下の手順に沿って手続きを進めます。
マイクロ法人設立の手順
- 定款(ていかん)に記載する基礎情報を決める
- 法人用の印鑑を作成する
- 定款を作成する
- 定款の認証を受ける
- 資本金を払い込む
- 登記申請書類を作成し申請する
- 登記簿謄本と印鑑証明書を受け取る
- 役所に届け出る
個人事業主が法人化する場合は、登記後に“個人事業の開業・廃業等届出書”を税務署に提出し、廃業手続きを行わなければなりません。
また上記にくわえて、“給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書”の提出や、社会保険への切り替え手続きも必要になります。
まとめ

本記事では、合法的な節税方法“マイクロ法人”の概要を解説しました。
マイクロ法人は、従業員を雇わず代表者1人だけで事業を行う法人(会社)です。
所得税や住民税、社会保険料の負担を抑えることを目的として、主に個人事業主やフリーランスの方が設立するのが一般的です。
法人設立のための費用や法人住民税といった出費は伴うものの、条件次第ではこれらの費用負担を上回る節税効果を得られます。
ご自身が手掛けている事業が軌道に乗り始めた際には、ぜひマイクロ法人の設立をご検討ください。